マイクへの音の入れ方を理解する
声優の仕事は声の演技力などの基本的な「役者」としての技術も必要ですが、手タレならぬ「声タレント」としての声を録音する技術も必要となります。
実際にレコーディング・エンジニアになる必要はありませんが、基本知識を抑えておかなければエンジニアが何を気にしているのかが分からなくなってしまいます。
現場で何を気をつけるのか基礎知識と一緒に覚えていきましょう。
マイクと周辺の機材の名前
後々の解説や基礎知識として、マイク関係の名称とその基礎知識を解説していきます。
ダイナミックマイク
カラオケなどでも見る形状のマイクはダイナミックマイクです。
スタジオスタンダードとして知られるSHURE SM58。
このように、ダイナミックマイクは形状的にマイクグリル(丸いところ)を覆ってしまうと、空気と音の逃げ場がなくなり音割れなどの原因となります。
たまにアーティストのテレビパフォーマンスなどでマイクグリルを持っている人がいますが、その場合エンジニアが相当気を使っているか、別のマイクで音を拾ったり、口パクの事もあるので真似しないようにしましょう。
コンデンサマイク
上記写真は、プロの現場でよく見かけるNEUMANN U87Aiで、かなり高価なもの。
コンデンサマイクの特徴として「衝撃に非常に弱い」といった特性があり、基本的に手に持って使うことはありません。
そのため、ダイナミックマイクのように「手で覆って失敗する」といった事はないので、そこに音をどうやって運ぶかの意識だけで問題有りません。
練習時にセッティングなどを自分で行う場合、はじめのうちはスタジオのスタッフに使い方をちゃんと聞く必要がある機材です。
一般・中級グレードのレコーディングスタジオであるのは、RODE K2なども見ることが出来ます。
ポップガード
声を発生したときに出てくる呼気や唾などを、マイクに直接当てないようにする道具です。
コンデンサマイクを利用した際に、直接息がかかるとノイズが走り思ったような音が取れない事があります。
メッシュ地のもの以外に、金属製のものなどもあり、各スタジオのこだわりや、声質にあわせて調整されることがあります。
ボーカリストなどがポップガードに口を当てて歌うシーンがミュージックビデオや制作番組などによくありますが、声優の場合複数の演者とともに使う場合があるのでそのような使い方は基本行わないと覚えておきましょう。
マイクスタンド
マイクを設置しているスタンドです。
収録時にブースが小さい場合、このスタンドに手足が当たらないように要注意。
折れ曲がってるものをブームスタンド、直線のものをストレートスタンドと言います。
声優の録音で使われるコンデンサマイクの場合、ブームスタンドを使い距離や高さの調整を行うことが一般的です。
また、音声録音中心のスタジオでは、備え付けの天井から吊り下げるタイプのスタンドを採用してる場合もあります。
シールド・キャノンケーブル
マイクから録音機材のミキサー、及びインターフェースへとつながるケーブルです。
ミキサー・インターフェース
プロっぽい現場によくあるアレ。
複数のマイクで拾った音を調整したり、録音するパソコンへ電子情報を送信するものです。
調整部分のみのものをミキサー、パソコンに変換するものをインターフェースと言い、デジタルミキサーと言われるものは両方の性能を兼ね備えている事が最近の主流です。
かなり古くからあるスタジオではミキサーとアナログエフェクトのみを使っている場合もありますが、音声録音の現場で見る機会は少ないでしょう。
基本的な音の入れ方
当たり前のことですが、マイクに対して真っ直ぐに音を入れるのが最善です。
筆者がエンジニアをやってた時に多かったのは、台本などがあるとどうしても意識が下に向いてしまう初心者の方が多かった印象があります。
ちゃんとしたエンジニアがいる場合、マイクとの距離感は「自分が声を出しやすい距離」が最善です。通常ポップガードから、拳一個分の距離で話すのが基本です。
また、複数人で同時にレコーディングする状況を想定して約50cm~1mの距離でしゃべる練習も併せてすることも意識して見てもよいでしょう。
ポップガードを通して直線上に音を入れる
ポップガードを立てていても、基本的にマイクの集音部分に向かって演技します。
マイクと口の間を並行に横切るようにポップガードがセッティングされている事を意識しましょう。
複数人の収録の際に、少し斜めからの音声の吹き込みがありますが、なるべく正面で声を入れられるように全体の立ち位置の調整等意識すると良い音が入れられます。
声だけの仕事と思われがちですが、声優の仕事は現場でのポジショニングや足音を入れないようにする足運びなども含め、他の役者と同様に体の動きも要求されていると意識すると、より現場で良い演技が出来ます。
息の吹き込みに注意
ポップガードがあれば基本的に息の吹き込みは少ないのですが、どうしても少し斜めの位置から声を入れないといけないとき、呼気による吹き込み音が入らないように注意しましょう。
いい演技が出来たとしても、吹き込みが入っていたら使えませんし、唾が飛んでしまったらその後のマイクのコンディションに影響します。
複数人で練習するときなど、ポジションによってポップガードを避けて息が入ってしまう位置を調べておくと本番でやらかさずにすみますね。
声優志望者向けマイクを使ったトレーニングメニュー
実際にマイクを使ったトレーニングメニューをご紹介します。
録音練習
基本的な練習です。
滑舌やセリフの抑揚など、直後及び後ほど確認するための練習が一般的ですね。
台本等を用意してから、練習に臨むようにしましょう。
演技で出す一番大きな声で音割れしないギリギリのゲインに合わせて、他の音が綺麗に入るように心がけましょう。
雑音確認練習
服の擦れた音、足音など、どういった音がマイクに拾われるのかを確認する練習です。スタジオで練習するようにしましょう。
基本的に音がならない服・靴を使う意識が必要ですが、人間の耳はどうしても慣れで分からなくなってしまうこともあるので、本当に音が入っていないか確認すると良いでしょう。
通常の喋り声で音割れしないギリギリのゲインに合わせて、想定される複数の動きを試してみて、どれぐらいの音までが入ってしまうのかを調べると現場でポジションのスイッチングする時に役に立ちます。
角度をつけた際の音の違いを調べる
マイクに対して音を入れるのは正面から45度ずつ。90度までの角度で行います。
分度器などを使い角度を確認して、マスキングテープなどを使ってマイクからの角度を調べてから録音するのがオススメ。
上記で何度か書きましたが、演技を行う時に複数人で1本のマイクを使うシーンは多く存在します。
そのため、角度がついた状態でも同じクオリティの音声を入れる技術をつけていきましょう。
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